薫る言葉

本や映画のことなど、思ったことを言葉で表せるように

『多読術』を考える

暖かくなったと思ったら、やはり春が気温を間違えている。それとも、少し引っ込んで休んでいるのか。今日は恐ろしいほど寒く天気も悪い。そんな日には家で大人しく読書していたい。

 

自分は基本的にかなり見境なく読書をする人間だと思う。好き嫌いはせず興味を惹かれたものはとりあえず読んでみる。しっかりと腰を据えて読むものもあれば、片手間にさらっと読むものもある。例えば人を待つ時に古本屋に立ち寄って百円の棚から適当なものを選んで喫茶店で読んで待つ。自分にとってこれは食事と食事の間の間食のようなもので、スナック本とでも考えている。

 

先日、そんなスナック本として読んだのが松岡正剛の『多読術』だった。ウェブ上でブックナビゲーション「千夜千冊」を展開するセイゴウ流の読書術をインタビュー形式で語る一冊だ。読書は編集であるという考えを軸に、多読の仕方や本屋の活用法、読書の環境など様々な読書のコツが述べられているが、単なる効率的な情報収集のためではなく、本の宇宙に積極的に迷い込んでいくための言わば手引書である。

 

個人的に既に意識している読み方をより深めてくれるような一冊だったが、特に印象に残っているのは、読書は食事に似ているということである。どこで食べるか、何を食べるか、何を使ってどう食べるか、何が好きで嫌いか、何と組み合わせるか、様々な方法が食事にはあるけれど、それは読書も同じである。

好きだからといって同じものを毎日食べていても、少し味の変化を楽しんでみる。嫌いなものでも調理を変えて食べてみる。そのように読書も楽しめば良いのだ。誰かと一緒に食べても良いし、食べ残しをしても良い。

 

読書における大食漢になっていけばもしかしたら新たな景色が見えるかもしれないそう思えた。ただし胃もたれには十分注意しなければいけない。